2006年12月05日

No.9【メンタルヘルス不全の企業リスク なぜ起きる−会社と社員のくいちがい】松本桂樹[著]

 「うつ病かどうかをチェックするリストに「MINI」というものがあります。これは米国精神医学会の診断基準(DSM-4)をもとに作成されたもので、この2週間を振り返り、以下の項目のうち(1)か(2)のいずれかの項目にあてはまり、かつ全項目中五つ以上にマルがつく場合、うつ病の可能性が高いと考えられます。

MINI
(1)毎日のように、ほとんど一日中ずっと気分が沈んでいる。
(2)何に対しても興味がわかず、楽しめない。
(3)毎日のように、食欲が低下、または体重の増減が激しい。
(4)毎晩のように、寝つけない、夜中や早朝に目が覚める。
(5)毎日のように、動作や話しかたが遅い、またはイライラしたり、落ち着きがない。
(6)毎日のように、疲れを感じたり、気力がわかない。
(7)毎日のように、自分に価値がない、または申し訳ないと感じる。
(8)毎日のように、仕事や家事に集中したり、決断することができない。
(9)この世から消えてしまいたいと思うことがある。」



 メンタルへルスの重要性、というとすこし現実とは離れた労務管理の勉強の話のようですが、この本では企業が抱えるメンタルへルス不全社員の実情と、企業のとるべき対策について豊富な事例をもとに記載しており、“労務管理”といった現場から離れた話ではない、実際にどこにでも起こりえる生々しい話として捕らえることができます。

 そしてその深刻度は以下のの文章を読むとはっきりと認識できると思います。
「メンタルヘルスの重要性が叫ばれるようになってはきたものの、企業の現場では十分な対策がとられていないのが現状です。しかも中小企業になるほど対策にとりくんでいないことが調査から明らかになっています。
 企業での対策の遅れが目立ついっぽうで、近年の労働者のメンタルヘルスの悪化はすすむばかりです。悪化の傾向は、精神疾患による労災申請者数の増加にも如実に現れており、平成8年まではひと桁ないし10人台だった申請者数は、平成17年度では656人(うち、認定者127人)まで増加しています。
 また申請者の多くが、業務過重によるうつ病の状態を呈しており、平成17年度の申請者656人のうち、147人は過労自殺に関するものでした。」

 精神疾患について、適応障害やパニック障害等、この本でも様々なものが事例として取り上げられています。そのどの事例もメンタルヘルスの管理の中では見過ごせない重要なものですが、やはり引き起こす結果の深刻度が高いのは「うつ病」ということになると思います。

 そして「厚生労働省研究班の調査によると、成人の15人に1人が、これまでの人生でうつ病を経験しているとの結果がでており、誰もがなりえる疾患である」こと、また「うつ病は『気持ちが弱いから』『根性がないから』かかってしまうものではなく、過重労働、急激な環境変化、事件・災害・死別による心理的なショックなどにより、誰でもがなりえる病気である」ことを警告しています。

 大企業においては、比較的メンタルヘルスの重要性が理解されており、何らかの対策を講じている企業も多いというデータが出ていますが、先ほどの「15人に1人」という数字からすると、「対策を講じなければならない状況」におかれているのかもしれません。

 私が感じたことは、これらの精神疾患について、知識として知っているか否かによって、対応が分かれてしまうということ、そしてその間違った対応が会社にとって、そして何より従業員にとって深刻な結果を引き起こしてしまう可能性があること、そして今後の企業経営においては必須の労務管理である、ということです。

 たくさんの事例の中には、何らかの精神疾患を抱えているにもかかわらず、周りの理解がなく本人も責任を感じてさらに頑張り状況を悪化させてしまうケースも多くあり、まずは何より正確な知識を持つ人間が管理職の中にいることが必要です。

 本書の後半では、企業の取るべき対策について、教育研修の実施や就業規則の整備など、具体的な方法について述べられており、人事労務管理に携わる人にとっての情報は十分に網羅されています。職場のメンタルヘルスについて書かれた本はまだ意外にも少ないのですが、この本は実務に携わる方にとって良書だと思いますし、書店での扱いは「地味」ですが、もっと多くの方に読んでいただきたい一冊です。

posted by T.Sasaki at 10:00| Comment(0) | TrackBack(0) | ■メンタルヘルス対策 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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