2007年02月27日

No.20【成功はゴミ箱の中に】レイ・クロック/ロバート・アンダーソン[共著]

 「 私の味覚は鋭い。フィレオフィッシュとチーズのように、世間に好まれそうな食べ物の組み合わせはたいていピンとくる。しかし、時には外すこともあるようだ。そのいい例がフラバーガーである。私は、これはフィレオフィッシュより成功すると賭けていた。フラバーガーとは、二枚のスライスチーズと焼いたパイナップルを、トーストしたパンにのせるというもので、私の大好物なのだが、実際、販売をしてみるとまったく鳴かず飛ばずであった。ある顧客にはこう言われた。

 『フラは好きだけど、バーガーはどこ?』

 すべてがうまくいくとは限らない。 」



 マクドナルド、今では世界で最も知られたファーストフードのチェーン。今回紹介する本の著者、レイ・クロック氏は1954年、52歳の時にマクドナルド兄弟のハンバーガーレストランをみてチェーン化したいと思い立ち、行動に移しました。マクドナルドという巨大チェーンがどのようにしてできていったのか、著者自身の言葉で語られていきます。

 このメルマガ創刊号で取り上げたキンコーズも、そして今回のマクドナルドも最初の一歩は小さなものでした。そこから巨大なチェーンを築くまでに、どれだけの苦労があったのか、どうやって乗り切ったのかは、それだけで読む人の興味を惹きます。

 本書の中で、著者の哲学が語られます。なるほど、このような考え方の持ち主であるからこそ、周りに優秀な人材が集まり、周りの人に助けられ、ときには信頼した人から裏切られたり、失敗をしたりしながらも困難を乗り越えて成長しつづけられたのだろう、と考えさせられます。その中のいくつか興味深いもの、面白いものを下記に引用します。

 「未熟でいるうちは成長できる。成熟した途端、腐敗が始まる」

 「仕事があれば何でもやってみた。仕事とは、その人の人生にとって、ハンバーガーの肉のような存在である。『仕事ばかりして遊ばなければ人間駄目になる』という格言があるが、私はこれに同意しない。なぜなら私にとっては、仕事が遊びそのものだったからだ。野球をして得るのと変わらない喜びを仕事からも得ていたのである」

 「競争相手にスパイを送り込むべきだと真剣に言う人間もいた。信じられるだろうか。ドナルド・マクドナルドがスパイだなんて!そんなばかげた考えに対する私の回答はこうだ。『競争相手のすべてを知りたければゴミ箱の中を調べればいい。知りたいものは全部転がっている。』私が深夜二時に競争相手のゴミ箱を漁って、前日に肉を何箱、パンをどれだけ消費したのか調べたことは一度や二度ではない。私は競争相手と正々堂々と戦う。強みを鍛え、品質、サービス、清潔さ、そして付加価値に力を入れれば、我々についてくることができずに競争相手は消滅していくだろう。」

 「その日の夜、ゲリーが家に帰って妻のボビーに、『レイ・クロックは頭がおかしいか、夢追い人か、その両方だ。』と話していたことを後に知った。彼はビジネスが来週まで持つかを心配しているのに、私は将来の億万ドル単位の成長を考えている。それから一年ほど経ったとき、ゲリーはあるドライブインから仕事を依頼された。報酬も我々の払っていた金額の二倍だった。しかし彼はその仕事を断った。ヘッドハンターが驚いて理由を尋ねると、彼はこう言ったそうだ。『なぜなら君たちの会社にはレイ・クロックがいないから』」

 「『レイ、私はあなたから多くの注文をいただいたことへの感謝を、何らかの形で表したい。あなたの店に何かあげられるものはないかな─サインや時計─何がいいかい?』・・(中略)・・『私は良い製品以外、何もいらない。これからはワインを送ったり、ディナーに誘ったり、クリスマスプレゼントを買ったりしないでくれ。コストを下げられるのなら、その分をマクドナルド店のフランチャイズパートナーたちに還元してほしいんだ。』」

 「私は、職権というのはいちばん下のレベルにいる人の手にあるべきだと常に感じていた。店にいちばん近い立場にいる人間が、本部に指示を仰がずとも決断できるべきだと。・・・(中略)・・・私は職権は仕事とともにあるべきだという態度を保持した。確かに間違った決断も犯してしまうだろうが、それが人々を企業とともに成長させる唯一の方法なのだ。押さえつけようとすれば息が詰まってしまい、良い人材はよそへ流れていくだろう。・・・(中略)・・・企業は、マネジメントを最小にとどめることで、最大の結果が生まれると信じていた。」

 「幸せを手に入れるためには失敗やリスクを超えていかなければならない。床の上におかれたロープの上を渡っても、それでは決して得られない。リスクのないところには成功はなく、したがって幸福もないのだ。我々が進歩するためには個人でもチームでも、パイオニア精神で前進するしかない。企業システムの中にあるリスクを取らなければならない。これが経済的自由への唯一の道だ。ほかに道はない。」

 「やり遂げろ ─ この世界で継続ほど価値のあるものはない。才能は違う ─ 才能はあっても失敗しているひとはたくさんいる。天才も違う ─ 恵まれなかった天才はことわざになるほどこの世にいる。教育も違う ─ 世界には教育を受けた落伍者があふれている。信念と継続だけが全能である。」

 この中で私が一番感銘を受けたのは、最後の言葉「やり遂げろ ─・・」です。「信念と継続だけが全能」という言葉はビジネスだけでなく、人生そのものに通じる考え方であると思います。

 また、本書の中で印象的であったのが、レイ・クロックがともにビジネスを行うことになる数々の登場人物です。中でも、初期のマクドナルドで中核的な役割を果たすジェーン・マルティーノ、ハリー・ソナボーンとの出会いは、企業が成長する上で欠かせない人との“出会い ”となります。いくつかの起業家の自伝を読んできましたが、必ずこういった“実務家”、“調整役”と出会いがあり、企業の発展の中心的役割を果たす場面があります。逆に言えば、こういった出会いが無ければ、企業の発展も難しい、ということになるかもしれません。

 レイ・クロックはこの二人との出会いと仕事上の役割、そして確執、和解といったものを淡々と語っています。財務面を一手に取り仕切っていたハリーは、最終的にはレイ・クロックとの口論の末、会社を去っていくことになりますが、そのときの心境を次のように語っています。

 「大企業の上に立つ者には、背負わなければならない十字架がある。そこに上り着くまでに、多くの友人を失うことになる。トップは孤独だ。・・・(中略)・・・この状況を思い起こすと、チャイニーズボックスを開けるような気持ちになる。一つの箱を開けるとすぐに次の箱が現れ、最後の箱を開けると、空箱があるばかりだ。そして喪失感で胸がいっぱいになる。」

 著者レイ・クロックによるあとがきには、次のように書かれています。

 「会社はまだ若々しく成長しており、私もまた成長途上であった。事実、私の七五歳の誕生パーティーで、自分がいままで以上に生き生きとしていると感じた。それは古いマクドナルド仲間と再会することができた素晴らしい祝典だった。彼ら皆と、なかでもジェーン・マルティーノとハリー・ソナボーンに再び会えたことは至上の喜びだった。ハリーとは今後いっさい会うことはないと確信したときもあったので、彼が私の肩に手を回し、「レイ、君は私の一番の親友だよ」と言ってくれたときはとてもうれしく、すべてのことがうまくいくように思えた。」

 レイ・クロックは1977年にこの本を書き終え、1984年1月14日、心不全で亡くなりました。最後の数年間、車椅子生活を強いられながらも会社にほぼ毎日顔を出していたとのこと。70歳を過ぎてなお「成長途上」といい、「私にとって仕事が遊びそのものだった」という言葉どおり最後まで仕事に(遊びに?)生きた人生でした。

 彼の生き方を見ると、仕事と遊び(プライベート)を分けるという議論が意味の無いものになります。仕事をイヤイヤやっているうちは、このような生き方は不可能なのでしょう。これだけの情熱をもって仕事に(遊びに)取り組むことができたら、成功へと進んでいくのかもしれません。

 信念と継続─この言葉に出会えただけでも、本書を読む価値がある、と思いました。
posted by T.Sasaki at 15:09| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | ■起業、成長のための組織化 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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