2007年01月17日

No.15【これしかないよ日本の人事】宋 文洲[著]

 「我々は何のために働くのだろう。
 実は我々は評価されるために働いている。
 異性に持てたいのは異性に評価されたいからである。昇進したいのは会社に評価されたいからである。金持ちになりたいのは家族と世間に評価されたいからである。「評価」は我々の人生の根本に関わるキーワードである。」


 今回ご紹介する本は、以前このメールマガジンでご紹介いたしました【仕事が出来ない人は話も長い】の著者、宋 文洲氏の著書です。2006年1月に発行されており、肩書に「ソフトブレーン代表取締役会長」とありますが、以前ご紹介させていただいたとおり宋氏は2006年8月31日、ソフトブレーンの取締役を辞任、正式に退任されています。
 
 このメルマガは基本的には新刊を中心にご紹介させていただいておりますが、この本を先日読み終えた時、その内容のすばらしさと、成果主義の可否について非常に明確な提言がなされていたため、ぜひこのメルマガで取り上げなければならないと思い、今回ご紹介させていただくこととしました。

 内容については、以前ご紹介させていただいた【仕事が出来ない人は話も長い】から引用した部分、
「『人事』という言葉の本質は『人』ではなく『事』にある。人事評価の本質は、人の評価ではなく事の評価にある。」
という宋氏の考えを詳しく解説した内容となっています。

 日本の人事制度の矛盾点について、国際的な比較、事例を挙げながら徹底的に指摘し、人事制度の変革の必要性が述べられていきます。経済が右肩上がりだった時代、多くの日本企業に見られた年功序列制度(本書では“結果主義”という言葉を使用)については、労働者の価値観が多様化し終身雇用制も崩れた現代においては、“優秀な人材を確実にバカに変える脅威の人事システム”であると痛烈に批判しています。

また宋氏は、これまで減点主義であった日本の人事制度に対して、加点主義への転換することの必要性を次のように語っています。
「日本のサラリーマンの最大の欠点は『ミスを恐れて少しもチャレンジしない』ことだった。加点主義の導入はこの欠点を解消し、日本企業に大きな活力を与える効果がある」

 この加点主義という考え方は、成果主義と結びつき、今後の人事制度を考える中ではどうしてもこの成果主義を基本にせざるをえない、と結論づけています。

 しかしながら、宋氏は成果主義について、“導入するには少なからぬリスクを伴う人事システムであり、扱い方を間違うと、ついには会社をつぶしてしまいかねない”とし、100%の成果主義については薦めていません。その理由については次のように語っています。
 「なぜなら、自分の業績を上げるのを第一義にしてしまうことで、先輩社員が後輩たちを育てようとしなくなるだけでなく、ひどい場合には、上司が部下の成果をことごとく横取りするといったことまでが、日常的におき始めるようになるからです。」
 
 そしていよいよ理想の人事制度について語られていきます。その方向性については、「・・・ 定量評価(個人の売上高など「数字」の部分)と定性評価(部下や後輩の育成、顧客に与える高感度など「人」の部分)の適切なバランスを考え、いわば年功序列方式と100%の成果主義の間にあるものを模索する・・・。」としています。

 私が一番重要だと感じたのは、成果主義を考える場合、何をもって「成果」とするか、という次の記述です。
「・・結果(販売実績などの「数字」)と成果は違います。単純に結果を成果と考えたら、社内的には先の広告代理店(※注:100%の成果主義を導入した企業の事例)のように上司による部下のえこひいきも考えられる(※注:事例では一部のイエスマンの部下が上司に重用され実績が挙げやすい状況になっていた)し、実際はそうでなくとも「難しい担当先に回されたからオレは実績が上がらないんだ」といった不満が必ずでるのです。
 一方で社外的には、営業マンが『売らんかな』の姿勢になってしまうため、それを嫌ってお客様が離れていくケースが増えます。」

 こういった成果主義ならぬ結果主義は絶対のタブーであるとし、結果(=リザルト)重視ではなく、過程(=プロセス)重視を主張しています。
 過程を重視する人事評価システム、プロセスマネジメントについては、本書の中でいくつかの事例が挙げられていますが、次のデパート店員や貴金属、家電製品、携帯電話等の接客プロセスがわかりやすいと思いますので転記いたします。
 
「 1.お客様に近づく
  2.声を掛ける
  3.お客様に商品を見せる(接客にはいる)。
  4.商品を手に取らせ、身につけさせる。
  5.(鏡に映すなどして「よくお似合いです」と)ホメる。
   ・・・(中略)・・・
  6.(契約カウンターの)椅子に座ってもらい、必要な手続きをすます。
  7.(関連商品などの)追加購入をお勧めする。
 この7段階に沿って、それぞれ評価の計算式をつくっておきます。
 それはたとえば、1.ができたら1点、2.は2点、3.が3点、4.までいけたら5点、買っていただける段階の6.なら5.の2倍評価で20点、7.に成功するようならその上の30点といった具合です。」

 こうしてプロセスを評価にしておくと、社員には自分に求められているものが明確になり、何をどう頑張れば評価されるのかが分かるとのこと。そしてたとえ接客して結果が出なかった(売れなかった)ときでも、1〜5.のプロセスでプラス評価されるのです。 
 結果としてこうした「プロセスマネジメント」が好感度抜群の社員を生んでいく、というわけです。
 
 これまでこのメールマガジンでは、労務人事管理について多くの参考になる考え方を学んできました。中でも年功序列の人事制度については、多くの弊害が指摘されてきました。
 若者がすぐに退職する、社員がいっこうにヤル気を見せない、チャレンジせず社内政治にいそしむ『ぶら下がり社員』になる、不満ばかり言うトラブル社員になりさがる、減点を恐れるあまり品質を犠牲にし法を犯してまでもノルマの達成や納期を優先させミスを隠匿する、といった数々の弊害を生む一つの要因になっているといっても過言ではないと思います。

 宋氏の主張する理想の人事評価制度、プロセスマネジメントは、きちんと基本を抑えて導入すれば会社の業績に必ず反映すると私は思います。人事制度の改革は大変ですが、しかし手をつけなければ企業の繁栄は望めないかもしれないのです。

 今後も人事評価制度については、新刊にこだわらず多くの書籍から引き続き学び、あるべき姿を模索していきたいと思います。

posted by T.Sasaki at 10:00| Comment(1) | TrackBack(0) | ■理想の人事制度とは? | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
はじめまして。人事効果・評価表を社員がより納得いくものに改定できいないか検討しております。現在の評価方法は、目標管理と過去を振り返った評価を参考にしています。本書を含め人事に関わる本を読みながら勉強しております。そこで、ご指導頂きたいことがあり、宜しくお願い致します。@人事は「人」を見るのではなく、「事」を見よという考えは共感しております。成果主義は結果主義でなく、プロセスを評価することだということも。ただ、最終的には「数字(定量評価)」と「人(定性評価)」をする点が矛盾しているように思います。特に、マネージャは人格や人間性が重視されるという点(本書p134)など。A人の評価はどのようにすればいいのでしょうか。担当者/マネージャ。以上
Posted by 河野克至 at 2013年05月14日 17:28
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