2007年01月24日

No.16【ケーススタディ「問題社員」の管理術】DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー編集部[編・訳]

 「アンディ・ツィンマーマンは頭も切れれば、仕事もできる。とはいえ、だれかのミスで自分に害が及んだり、自分よりも無能とみたりすると、その人を罵倒せずにはいられない。そんな問題児がいるとは知らず、ジェーン・エプスタインは彼が所属するチームの管理職として赴任してきた。彼女はすぐさま、ツィンマーマンの傍若無人な態度を目のあたりにする。さっそく上司として彼と話し合ってみると、案外物分りがよい。しかし、これで一安心と思ったのは早計だった──。ジェーンは赴任してからずっと、前職の上司にメールで相談していた。悩める彼女の心の日記を読んでみよう。」



 今回ご紹介する本は、どんな組織にも必ずいる「問題社員」への対処方法について、ケーススタディで学んでいく内容になっています。まえがきの中で著者は本書の構成と内容について次のように語っています。
「各ケースの後には、四〜五人のコメンテーターが登場し、ケースについて、どのように解決すべきか各自の意見を述べます。こうした問題への解決策には絶対的な正解はありません。複数の専門家の回答を読むことで、あなた自身であればどう解決するか、考えるうえでの参考にしていただきたいと思います。」

 この「絶対的な正解はない」という考え方は、この種の問題に対処する場合、非常に現実的であると思います。
 実際、このような問題社員に対して会社が取る方法は一つではなく、その会社の状況や理念、問題社員の行動が及ぼす影響、等々数多くの判断材料から、最終的に“その会社としての”回答を出すわけです。同じ種類のトラブルであっても、会社が違えば(経営者が違えば)回答も違うのが現実社会です。

 ケーススタディの後のコメンテーターの意見は非常に参考になります。また、ケースによってはコメンテーターの意見が全く逆の主張をしていたり、ほぼ全員一致の回答をしていたりと、この種の問題への対処が難しいことをうかがわせます。
 
 コメンテータには、ビジネススクール教授、経営者、心理学者、弁護士、コンサルタント等さまざまな職種、業界から選ばれています。その立場の違いからくる回答の相違なども本書のみどころです。また、同じ経営者であっても意見が割れていたりするのは非常に興味深く、参考になります。
 
 ケーススタディを読み終えると、「自分ならこうする」という考えを必ず持つと思います。その上でコメントを読むと、「こういう考え方もあるのか」とか「これはやりすぎではないか」等、自分の意見とすり合わせながら新しい視点を取り入れることができ、問題への対処方法の幅を広げることが出来るのです。

 参考までに、8つのケースを転記しておきます。

 第1章 「ベテラン」と「若手」が学びあう風土に変えられるか
 第2章 ミスを責め立てるスター社員にどう対処すべきか
 第3章 変わり者をめぐる疑心暗鬼をいかになくすか
 第4章 CEOが現場に口を挟むのは必要悪なのか
 第5章 協調性なきクリエーターをいかに管理するか
 第6章 規律を乱す「やり手セールスマン」をいかに処遇すべきか
 第7章 対人関係力が問われる仕事に肥満社員は不適格なのか
 第8章 カリスマCEOのスキャンダルにどう対処すべきか

 それぞれのケースのコメントはどれも読み応えがあります。その中で第2章の「ミスを責め立てるスター社員にどう対処すべきか」ではコメンテーターである4人のうち、2人の経営者の意見が以下のように割れました。
 (※このケースの概要はメルマガ冒頭の引用部分をご参照ください。)
 
.「ツィンマーマンのような人はどこの組織にも存在する。かといって解雇するといって短絡的な考えは愚策でしかない。そのような人が思い切り能力を発揮できるような場を与え、周囲に悪影響が及ばないような環境を整えるのが最善である。」

.「『嫌な奴は雇わない』という採用方針があればよかったが、そうではなかった。したがって、ツィンマーマンを改心させるべく努めなければならない。このような人物には何らかの『制約』を課す必要がある。そして、解雇も辞さないといった毅然とした態度で臨むべきである。」

 1.のコメントでは、その問題の重要性は認識しながらも、このような人間はどの組織でもいる、という前提に立ち、「私の経験では、仕事ができる人材のなかには、気難しい者や人間関係でトラブルを起こすものが多い」「ツィンマーマンが、私が知る問題児たちと同じであるならば、このツィンマーマンも自己変革は無理だろう」などの認識に立ち、「定期的に一対一の話し合いの場を設け、チームからなるべく隔離しておくべき」「そのためには、組織構造を見直す必要があるかもしれない」とし、その対処は「難しいが不可能ではない」としています。

 一方、2.の場合には、本来なら雇うべき人間ではなかった、と主張しつつ、それでもこの上司がツィンマーマンを手放したくないのなら─という仮定でコメントしています。「具体的制約を課すべき」とし、改善するなら協力するという姿勢を見せつつも、「だれかをいじめるようなことがあれば、君に出て行ってもらうしかない」と、状況の改善が見られない場合には「解雇」を突きつけ、「通常のビジネスと同様、きっぱりと終止符を打つ必要がある」と訴えています。

 皆さんはどうお感じになりましたか? 私は、2.のコメントに近い考えをもちました。しかし本書では経営者のコメンテーターも多く、他のケースにも見られることですが、「他の社員にまねの出来ない成果を出すスター社員」に対して寛大なコメントが多く見られました。経営者は成果が好き、ということなのかもしれません。

 現実的には、その企業の理念や組織形態などもかかわってくると思います。その問題社員の行動が企業の理念に反しているのかどうか、また問題社員を隔離できるような仕事があるのかどうか。理念にそぐわないのに、その問題社員が会社から重用され出世してゆけば、現場には混乱が生じるでしょう。また隔離できれば良いですが、チームワークで成果をつくる職場の場合には、それこそ組織の見直しが必要となり、上記のコメント1.の対応は難しいかもしれません。

 いずれにしても、このような問題を抱えたときには、経営者が自分で決断を下さなければならないのです。実際にそのような問題を抱える前に、この本で問題への対処方法の幅を広げておくことは、きっとお役に立つと思います。

posted by T.Sasaki at 21:39| Comment(0) | TrackBack(0) | ■労務管理の重要性 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック

広告


この広告は60日以上更新がないブログに表示がされております。

以下のいずれかの方法で非表示にすることが可能です。

・記事の投稿、編集をおこなう
・マイブログの【設定】 > 【広告設定】 より、「60日間更新が無い場合」 の 「広告を表示しない」にチェックを入れて保存する。


×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。