2006年12月26日

No.12 【「3年目社員」が辞める会社辞めない会社】森田英一[著]

 「・・・優秀な人材の出入りが激しい社会になったということは、見方を変えれば、現在どんなに優れた人材がいる会社でもやり方が悪ければ人があっと言う間に去っていくし、逆に現在は小さくて知名度の低い企業でも、やり方さえしっかりすれば優秀な人材が集まって、飛躍できる時代になったということである。
 若手社員の三年三割問題は、いまからの人材流動化時代の序章に過ぎないということを正しく認識しておく必要がある。その認識のうえで、きちんと手を打っている企業とそうでない企業に大きな差が生まれてくるのである。」



 上記の引用文の中の“三年三割問題”とは、厚生労働省が最近行った調査で、新規大卒者が入社三年以内に転職する割合が35.7パーセントであることから、著者が簡易的に使用している言葉です。

 この本は、以前紹介させていただいた【若者はなぜ3年で辞めるのか? 年功序列が奪う日本の未来】と同じテーマを扱っていますが、【若者はなぜ・・】が以前ご紹介したとおり「若者の視点」で書かれていたのにたいし、今回ご紹介する本は、 人材流動化時代を向かえて企業がどのように人材育成について向き合うか、という問題を扱っています。

 第二新卒、という言葉が一般化し、入社三年以内に会社を辞めることは珍しくなくなりました。人材を育成してもすぐに辞めてしまい、教育に時間と費用をかけるのがバカらしい、と嘆く経営者の方も多いと思います。しかし、即戦力だけを雇うという考え方について、著者は次のように語っています。
 「成長した人というのは、成長意欲の高い人であることが多い。このような成長意欲の高い人を囲い込むための方策は、二つ考えられる。一つは『お金』。もう一つは『成長機会』である。」「・・・優秀な人材をつなぎとめておくためにも、人材育成の仕組みは欠かせない。」

 つまり、人材育成の手間を惜しみ即戦力だけを雇ってみてもそのような成長した人材ほど自らが成長する機会を会社に求めているため、会社に人材育成のしくみをしっかりと作っておかないと人材が流出するという現状は何も変わらないということ、そして結局は新卒にせよ即戦力にせよ優秀な人材をつなぎとめるためには人材育成の仕組みは必須である、ということなのです。

 本書はこの観点に立ち、経営者や人事部のみならず現場レベルのマネージャーにも人材を育成するためのマネジメントが必要であるとし、その具体的な方法について言及していきます。
 「いわば企業の人事戦略は『人事部一極集中』の時代から、現場に密着した『多数の成長プロデューサー郡』が担う時代へと変化しているのである。そのことに一刻も早く気がついて、有効な育成方法を会得した成長プロデューサー郡を確保しなければならない。」

 本書の著者、森田氏は組織人事コンサルティングを行う会社に勤務し、その後自ら人材育成コンサルティングを行う会社を立ち上げ、現在も代表として経営されています。いわば人材育成の“プロ”であり、その一つ一つの理論は、自らが経営する会社においても実践されているため、説得力があります。

 人材流出の問題は、単に採用にコストがかかる、というだけの問題ではありません。必要なノウハウが蓄積されず、会社に残る人に人材育成の負担が絶えずかかり、結果として社員全体のモチベーションを下げていく、という負のスパイラルに落ち込む危険をはらんでいます。

 団塊世代が大量退職する2007年問題、少子化に伴う深刻な労働力不足が予測されている中、いつでも採用すれば人材が集まる、という時代は終ってしまうかもしれません。その時に対応するのではなく、今から人材育成について真剣に考え、体制を整えてはいかがでしょうか。

posted by T.Sasaki at 10:00| Comment(0) | TrackBack(0) | ■理想の人事制度とは? | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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