2006年10月30日

No.4【アメーバ経営 ひとりひとりの社員が主役】稲盛和夫[著]日本経済新聞社

 「アメーバ経営は、私が長年にわたり苦労して築き上げた独自の経営管理手法であり、京セラの高収益経営の根幹をなすものなので公開すべきではない、という意見も社内にはあった。しかし、・・・(中略)・・・日本経済の発展に少しでも役立つならばと出版することにした。」




 最初に引用した文章は、「あとがきに代えて」の中で、稲盛氏によって綴られた文章です。本書を最後まで読み、そのすばらしい経営管理手法に感動し、経営者必読の書であるとの感想を持った私は、この一節を読んで、「本当に公開されて良かった。」と思いました。

 会社の寿命が著しく短くなったと言われる中にあって、1959年に設立された「京都セラミック株式会社(現京セラ)」が今なおグローバル企業として発展している理由は、本書の経営管理手法「アメーバ経営」にあったのです。

 「アメーバ経営」とは、京セラ創業当時、営業や製造、経営管理からクレーム処理まで1人何役もこなす稲盛氏が、組織が拡大するにつれて多忙を極め、ともに苦労を分かち合う共同経営者がほしい、との考えの中で生まれたもの。市場に直結した部門別採算制度の確立、経営者意識を持つ人材の育成、全員参加経営の実現という3つの目的を達成するための経営管理手法とのことです。

 京セラのユニットオペレーションである「アメーバ」の呼び名は、その小集団がまるで細胞分裂を自由自在に繰り返す「アメーバ」のようだと表現したある従業員の言葉から生まれました。

 採算単位であるアメーバは、明確な意思と目標を持ち、自ら成長を続けようとする、ひとつの自立した組織。細かくはいろいろな機能、原則がありますが、その根本は、従業員の経営者意識を高め、自ら「アメーバ」を経営するリーダーとして活躍してもらうためのもの。

 労使間対立が激しい当事、経営者は労働者に会社の状況をできるだけ知らせないのが一般的であるなか、稲盛氏は一人一人が経営者的な意識を持ってもらうために、あえて経営の実態を全従業員に包み隠さず知らせる方法をとりました。

 また、この「アメーバ経営」は、「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、人類、社会の進歩発展に貢献する」という京セラの経営理念が制度として具現化された経営システムである、と稲盛氏は言います。
 そして、「経営哲学をベースにした、会社運営にかかわるあらゆる制度のすべての分野と深く関連するトータルな経営管理システム」であり、やり方だけを真似してみてもうまく機能しない、と忠告しています。

 そのせいか、本書の中には、実務ですぐに使えそうな原則に混じって、「完璧主義の原則」という項目の説明の中に、「完璧は困難、それでも完璧にしようという強い意志があるからこそミスもなくなり、目標を達成できる」など、単なる経営手法の話にとどまらず、非常に“熱い”人材育成論にも触れられていきます。

 私が一番興味をもち、感心した点は、この「アメーバ経営」が、創業間もないころから「実力主義」をとってきた点です。「実力主義」とは、その名の通り実力によって評価される人事制度のことであり、「年功序列」で出世や報酬がきまる制度とは全く異なります。
 
 稲盛氏は「実力主義はアメーバ経営の重要な組織運営の原則」とし、「温情主義で実力のない人を、年長という理由だけでリーダーにしたのでは、全従業員がその不幸を背負うことになる」としています。そして実際に、中途採用の外部の人材を、創業以来の幹部たちに相談し了解を取り付け、その創業以来の同志よりも上の地位に就けていったとのこと。

 稲盛氏が実践した「実力主義」は、いわゆる「成果主義」とは違います。同氏は成果主義について「実績が悪くなり報酬が減った場合に、多くの社員が不満や恨み、妬みの心をもつことになるので、長い目で見ると、かえって社内の人心を荒廃させてしまうことになる」といっています。

 この「アメーバ経営」では、アメーバが実績をあげれば、信じあう仲間たちから賞賛と感謝という精神的な栄誉があたえられ、昇給・賞与に直接影響するような手法はとっていません。ただ、短期の成果で個人の報酬に極端な差をつけていない、ということであって、長期にわたり実績を上げた人に対しては、昇給、賞与や昇格などの処遇に反映させているとのこと。

 この時代に、年功序列ではない「実力主義」の企業があったのだということに、とても驚きました。

 本書には人事労務管理にとどまらず経営全般の有益な情報がたくさん詰まっており、紹介したい箇所がたくさんあるのですが、だいぶ長くなってしまいました・・。

 最後に一つ、現在経営に携わっている方、これから起業しようとしている方に非常に参考になる考え方を本書より引用させていただき、終了したいと思います。
 
 ・技術的な優位性というのは、永遠普遍のものではない。
 ・企業経営を安定させようと思うなら、たとえ技術的にさほど優れていなくとも、
  どこでもやれるような事業を  優れた事業にすることが大切である。
 ・つまり誰もがやれるような仕事をしていても、「あの会社はひと味違う」という
  ような経営をすることが、その会社の真の実力なのである。
 ・たとえ地味で平凡な事業であっても、キラリと光るものにする。それこそ、
  アメーバ経営の真骨頂である。

 すばらしい良書に出会えた、という思いで、本書を読み終えました。それでは。

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